
根管治療の痛み止めが効かないときに知っておくべき原因と対応策
「根管治療を受けたのに痛み止めが効かない」「薬を飲んでもズキズキする痛みが治まらない」といった方は少なくありません。
根管治療は歯の内部に入り込んだ細菌を取り除き、歯を残すために行う大切な処置ですが、治療後の痛みや違和感が生じることがあります。
特に痛み止めが効かないと感じたとき、多くの方は「治療が失敗したのではないか」「歯を抜かなければならないのではないか」と心配になるでしょう。
しかし、痛み止めが効きにくいのにはいくつかの理由があり、必ずしも治療の失敗を意味するものではありません。
原因を正しく理解し、追加処置やセルフケアを行うことで、症状を和らげながら歯を守ることが可能です。
本記事では、根管治療後に痛み止めが効かない原因と歯科医院での対処法、自宅でできる工夫までを詳しく解説します。
なぜ根管治療で痛み止めが効かないのか

なぜ根管治療で痛み止めが効かないのかその理由は次のとおりです。
- 炎症による薬の効果低下
- 服用タイミングのずれ
- 耐性や体質の影響
順番に解説します。
炎症による薬の効果低下
根管治療の痛みが薬で抑えきれない背景には、炎症の強さがあります。
根管の内部で細菌が繁殖すると、炎症物質が組織に大量に放出されます。
これらの物質は血液や組織の環境を変化させ、鎮痛薬の成分が十分に作用できない状態をつくってしまうのです。
同じ鎮痛薬を飲んでも「ほとんど効かない」と感じる人と「ある程度楽になる」と感じる人がいるのは、炎症の度合いに差があるためです。
また、炎症が激しい場合は局所麻酔すら効きにくいことがあり、歯科医師が治療に苦労することもあります。
そのため、「痛み止めが効かない」という症状は、炎症の進行具合を知らせるサインともいえるのです。
服用タイミングのずれ
鎮痛薬の効果は「飲むタイミング」に左右されます。
薬は服用してすぐに効くわけではなく、血液中の濃度が一定レベルに達して初めて効果を発揮します。
強い痛みが出てから飲むと、効き始めるまでに時間がかかり、その間にさらに痛みが増してしまうことがあります。
また、効果が切れる寸前まで我慢してから次の薬を飲むと、一度下がった血中濃度を再び引き上げるまでに時間がかかるため、痛みが戻ってくる感覚を経験する人もいます。
歯科医師の指示に従い、定められた時間間隔を守って服用することが、薬を効かせるために重要です。
耐性や体質の影響
薬の効果には個人差があります。
特定の鎮痛薬が体質的に合わない場合や、長期間にわたって使用していることで耐性ができてしまい、効果を実感しにくいケースもあります。
胃腸が弱い人は薬の吸収がスムーズにいかず、十分に効かない場合があります。
このような場合、歯科医師は薬の種類を変更したり、効果を補助する薬を併用したりといった調整を行います。
したがって、自己判断で「効かないから」と服用をやめてしまうのではなく、きちんと歯科医師に相談してください。
歯科医院で行われる根管治療の痛みの追加処置

歯科医院で行われる根管治療の痛みの追加処置は以下のとおりです。
- 局所麻酔や神経ブロック
- 抗生物質の投与
- 根管治療の再処置
それぞれ解説します。
局所麻酔や神経ブロック
痛み止めだけで症状を抑えられない場合、歯科医院では局所麻酔を追加で施すことがあります。
しかし炎症が強いと麻酔も効きづらいため、その場合は神経ブロックと呼ばれる方法を選択することもあります。
これは神経の根元部分に麻酔を効かせ、痛みの伝達を遮断する処置です。
即効性があり、強い痛みを一時的に抑えるのに有効です。
抗生物質の投与
痛みの原因が細菌感染による炎症であれば、抗生物質の内服が必要になります。
根管治療では細菌を物理的に取り除きますが、周囲の組織にまで感染が広がっていると、抗生物質の力を借りなければ炎症を鎮めきれません。
ただし、抗生物質は自己判断で中断すると耐性菌が生まれるリスクがあるため、必ず指示された期間を守って飲むことが重要です。
根管治療の再処置
「痛みが続く」「膿が出てくる」といった症状がある場合、治療で取り切れなかった細菌が再び悪さをしている可能性があります。
この場合、根管治療のやり直し、つまり再処置が必要になります。
詰め物や被せ物を外し、内部の感染源を改めて取り除き、再び根管を洗浄・密閉することで歯を保存します。
再治療は難易度が高く、精密な機器や経験が求められるため、信頼できる歯科医院で行うことが大切です。
吉松歯科医院では、滅菌・感染症対策を徹底していますので、以下のページも参考にしてください。
根管治療で痛み止めが効かない場合の症例紹介

痛みが持続しするケース:炎症の原因を取り除く

痛みが持続するということは、炎症があると言うことでその原因を取り除くことが一番重要になります。多くの場合は感染物質の取り除きが、観られます。
この症例は、通法通り麻酔を行い、ラバーダム防湿を行い、その後に原因である歯、患歯の冠を外します。

冠を外すと中に金属のスクリューを用いたレジンポストが入っているのでレジンだけを削って行きます。
この時点で以前の先生が治療した根管充填材であるガッタパーチャーが確認できます。オレンジやピンク色に見える部分です。

金属のスクリューに振動をかけると上手く外れてきま金属の先端を診ると金属の先端が変色している事がわかります。

角度を少し変えるとスクリューが入っていた先が感染している様です。

更にレジン部分を削り、根管内壁が出て来たら、う蝕検知液で染めて感染部の除去を徹底して行います。

前の先生が触れてなかった根管内部が見えて来ました。

根管内の内容物を慎重に取り除き、感染部を除去していくと破折線が視えて来ました。これが痛みの主原因だと思われます。
大多数の歯科医院ではこの写真が撮れるともう根管治療は終了となり、抜歯になります。
しかし吉松歯科医院では2006年頃から、アメリカ式の診断ではなく、独自の接着歯学を用いて破れてる歯を多く治療して来ました。

接着歯学を用いて破折線の接着を行い、次回から根尖部の治療がしやすい様にレジン隔壁を作ります。

次回の治療のために蓋の部分は色を変えてレジンを固めて1回目の根管治療は終了です。
通常であれば、これで痛みの症状はかなり改善されるはずです。
自宅でできるセルフケア

自宅でできるセルフケアは下記のとおりです。
- 鎮痛薬の正しい飲み方
- 食事・睡眠の工夫
順番に説明します。
鎮痛薬の正しい飲み方
痛みを抑えるためには、薬の正しい服用が欠かせません。
空腹時を避けて水と一緒に飲む、効果が切れる前に次の薬を飲む、成分が重複しないよう市販薬を安易に追加しないといった基本的な飲み方を守ることで効果が安定します。
また、痛みがひどくなる前に服用する「予防的な飲み方」も重要です。
食事・睡眠の工夫
硬い食べ物や極端に熱い・冷たい食べ物は刺激となり、痛みを悪化させることがあります。
治療中はやわらかい食事を選び、できるだけ反対側の歯で噛むように意識することがおすすめです。
さらに、睡眠不足やストレスは体の免疫力を下げ、炎症を長引かせる原因になります。
十分な睡眠と規則正しい生活習慣を整えることが、痛みを軽減する大切なセルフケアです。
我慢せず、歯科医師に症状を伝えることが大切

根管治療後の痛みはある程度予想されるものですが、「痛み止めが効かない」「腫れや膿がある」「噛むと強く痛む」といった症状が続く場合は要注意です。
これらは単なる一時的な炎症ではなく、再感染や治療の見直しが必要であるサインかもしれません。
重要なのは、症状を我慢して放置しないことです。
痛みを正確に歯科医師へ伝え、必要な追加処置や再治療を行いましょう。
吉松歯科医院では経験豊富な歯科医師が徹底した衛生管理のもと、治療を行っています。
根管治療に関してご不安な点、ご不明点がある方はお気軽にご相談ください。